
1. 優先順位の失敗
高市政権は、国旗損壊罪と皇室典範改正を優先して成立させた。その結果、連立パートナーが強く求めていた法案や、経済運営の指針である骨太の方針の策定が後回しになった。
政権は何を先にやるべきだと判断したのか。その選択が、現在の立法停滞の根本原因になっている。成立しやすい象徴的な政策を優先し、調整が面倒な実務を後回しにする傾向が明確に表れている。
2. 象徴立法の実態と停滞した実務
国旗損壊罪は7月17日に成立した。皇室典範改正も同日に成立した。いずれも保守層が長年求めてきた象徴的な政策である。
しかし国旗損壊罪は条文の要件が厳しすぎて、実際に機能する余地は極めて小さい。皇室典範改正も、次々代の皇位継承者がまだ19歳である段階で、将来の継承を先回りして制度を変更した立法であり、必要性が乏しい。
一方で、日本維新の会が強く求めていた副首都法案は、会期延長後も審議入りすらままならない。衆院議員定数削減法案は今国会での成立を断念された。骨太の方針2026も大幅に遅れて7月21日にようやく閣議決定された。
象徴的な成果を急いだ代償として、実務が明らかに停滞している。
3. 対立の固定化と中間層の不在
野党側の反応も建設的とは言えない。国旗損壊罪に対しては日本国旗だけを問題視し、外国国旗損壊罪が長年死文化している事実はほとんど無視された。皇室典範改正に対しては「女性天皇の道を閉ざした」との批判が即座に展開された。
このような反応は、政策の中身を議論するより政権批判の材料を集めているようにしか見えない。結果として、左右の対立が固定化し、中間層の声が政治に反映されにくい構造が強化されている。
国民が求めているのは物価対策や経済成長、少子化対策といった具体的な成果だ。政権が象徴を優先するたびに、実務的な課題が後回しにされる構図は、中間層の感覚から明らかに乖離している。
4. 政権の役割とは?
政権与党の役割は、左右の対立を煽ることではなく、実務を前に進めることにある。しかし現在の政権は、成立しやすい象徴的な政策を優先し、調整が困難な実務を後回しにした。
その結果、国会は停滞し、連立は摩擦を生み、重要な政策は遅れた。これは単なる順序のミスではない。何を先にやるべきかという判断そのものが、政権の能力と責任を問われているということだ。
国民の信託とは、象徴で支持を集めることではなく、困難な実務を前に進めるためにある。